第299章 私が誰か見極めて(9)

その夜、彼は長い間雨に打たれ、頭が空っぽのまま長時間歩き回った。翌日高熱を出し、ホテルの部屋に一人で自分を閉じ込め、七日七晩もぼんやりと過ごしてから、ようやく目が覚めた。

彼の携帯には多くの不在着信があり、そのほとんどがメディアからのものだった。その中に鈴木和香からの祝福メッセージがあり、映画祭で助演男優賞を受賞したことを祝うものだった。

そのメッセージを見て、無意識のうちに返信しようとした。しかし「ありがとう」と入力し始めた瞬間、彼女の誕生日の夜の出来事が潮のように記憶に押し寄せてきた。指が長い間止まったまま、最後には打った文字を一つずつゆっくりと消し、携帯を置いて立ち上がり、ホテルの床から天井までの窓の前に立ち、陽光に照らされた華やかな都市を眺めながら、心の中は真っ暗だった。

実際、赤嶺絹代が彼に言った言葉よりも、鈴木和香に捨てられた花とケーキの方が、彼をより悲しませた。

ずっと、自分をより良くしようと努力して、そうすれば彼女を愛することができると思っていた。しかし、彼女が自分を愛しているかどうかは、考えたことすらなかった。

ほら、鈴木和香は奈良に三回ほど来て、彼を食事に誘ったこともあった。以前なら、そんな彼女のメッセージは天から降ってきた喜びだったのに、その時は彼にとって苦痛でしかなかった。

青春の片思いは、多くが実を結ばずに終わる。彼も自分に言い聞かせた、このままでいいんだと。でも、心理的なものなのか、会わなければ会わないほど恋しくなった。ある時など、撮影を終えてホテルに戻る途中、道で鈴木和香と同じ服を着た女の子を見かけて、彼はばかみたいにその場に立ち尽くし、長い間見つめていた。アシスタントが何度も呼びかけてようやく我に返り、そしてなぜか急に気分が落ち込んでしまった。

そしてほら、大学卒業から二ヶ月後、彼が東京でイベントに参加した時、椎名佳樹と思いがけず出会った。

暇な時間に、彼は椎名佳樹とベランダでタバコを吸っていた。赤嶺絹代が自分に言った言葉を思い出し、さりげなく尋ねた。「聞いたんだけど、椎名家と鈴木家が縁組みするって?」

縁組みという言葉を聞いて、椎名佳樹は眉をしかめ、タバコを強く吸い込んで、軽く「うん」と答えた。