第290章 失望させてしまったの?(10)

深夜の静けさの中、両側の通りはネオンの光で彩られていた。来栖季雄は運転席でリラックスした姿勢をとり、鮮やかな光が時折彼の顔を照らしていた。傷跡メイクを施した顔でありながらも、その骨格から滲み出る美しさは隠しきれなかった。

鈴木和香は少し頭の位置を変え、より快適な角度を見つけると、バックミラーに映る来栖季雄の姿を見つめ、うっとりとしてしまった。

前方のカーブに差し掛かり、来栖季雄は本能的に横を向き、和香側のサイドミラーで後方の様子を確認しようとした。すると、いつの間にか目を覚ましていた少女が、漆黒の美しい瞳でバックミラーを通して自分を見つめているのに気付いた。

来栖季雄は眉間にしわを寄せ、素早く前を向き直してハンドルを滑らかに操作してカーブを曲がった。そして、ルームミラーに映る椎名佳樹と九割方そっくりな自分の顔を一瞥すると、ハンドルを握る手に力が入った。