鈴木和香は早めに来るように馬場萌子に言ったものの、馬場萌子が到着したのは決して早くなく、午前11時近くだった。
馬場萌子は車を敷地内に入れず、別荘の門の外に停めた。
鈴木和香は千代田おばさんに別れを告げ、バッグを持って外に出た。その時、馬場萌子はすでに車を反対向きにして、門の向かい側の道路脇に停めていた。
鈴木和香が道路を渡ろうとした時、一台のベンツが別荘の正門前に停まった。彼女は慌てて足を止め、車を避けようとした時、ベンツのドアが開き、来栖季雄のアシスタントが助手席から降りて、後ろに二歩歩き、後部座席のドアを開けた。
来栖季雄が車から降り、二歩前に進んだところで、門の前に立っている鈴木和香を見つけ、その場で足を止めた。
二人の間には約1メートルの距離があり、誰も先に声をかけることはなかった。