長い時間が経って、鈴木和香はようやく膝から顔を上げた。涙の跡は乾いていて、目は赤く腫れていた。しゃがんでいた時間が長かったせいで、立ち上がろうとした時に足がしびれて床に倒れ込んでしまった。
鈴木和香は唇を噛みながら床から立ち上がり、壁の時計を見た。もう12時15分を回っており、彼の誕生日は終わっていた。
鈴木和香はしばらくその場に立ち尽くしてから、目を伏せて寝室を出た。
別荘は空っぽで、彼女の足音だけが響き、鈴木和香の心には言い表せない寂しさが広がっていた。
彼女は物置に行き、段ボール箱を持ち出して寝室に戻った。そして床に膝をつき、ろうそくを一つ一つ拾い上げて箱に入れ、それを抱えて階下へ降り、物置に収めた。
寝室に戻った時、鈴木和香は尖った針金を手に持ち、壁に貼られた風船を一つずつ刺していった。風船が割れる音が次々と耳元で響いたが、彼女は少しも驚いた様子もなく、静かな表情のまま、壁に残った風船の皮を一枚一枚剥がしてゴミ袋に入れていった。
寝室の片付けを終えた鈴木和香は、ゴミ袋を持って階下に降り、外に捨てに行こうとした時、冷蔵庫に保管していたケーキのことを思い出した。一瞬立ち止まってから、ダイニングに向かい、冷蔵庫を開けてケーキを取り出した。拳を軽く握りしめ、次の瞬間にケーキ全体をゴミ袋に入れ、それを持って部屋を出て、団地の共用ゴミ箱に捨てた。
鈴木和香が全てを片付け終えたのは、もう午前一時だった。化粧を落として風呂に入り、そしてベッドに潜り込んだ。
最近毎晩来栖季雄が帰ってきていたせいか、何か足りないような気がして、寝返りを打ちながらなかなか眠れなかった。ほら、やっと眠りについたと思ったのもつかの間、すぐに目が覚めてしまった。窓の外を見ると、空はうっすらと明るくなっており、ベッドの反対側は空っぽで、明らかに来栖季雄は帰ってきていなかった。
鈴木和香は布団にくるまってしばらくベッドに座っていたが、階下で鍵を開ける音が聞こえた。思わず布団をめくってベッドから飛び降り、素足のまま寝室を出た。階段の入り口まで来ると、千代田おばさんが大小の荷物を持って台所へ向かう姿が見えた。