鈴木和香は自分のお腹が空いているのを感じていたものの、食欲があまりなく、食事の動作がもたもたしていた。
馬場萌子が運んできた皿には、料理が山盛りで、小さな白い茶碗も二つ置かれていた。
馬場萌子は座って、その中の一つの白い茶碗を鈴木和香の前に置いた。「和香、今作り立ての東坡肉よ、あなたの分を持ってきたわ。」
「ありがとう。」鈴木和香は返事をして、茶碗の蓋を開けた。濃厚な肉の香りが立ち込めてきたが、食欲をそそるどころか、むしろ胃の具合が悪くなってきた。
このホテルの東坡肉は、奈良の料理人が作っていて、味は本場そのもので、ここの看板料理と言えるものだった。鈴木和香はいつもとても好んで食べていたのに、今回は何故か、箸で少し赤身を取って口に入れ、少し噛んだだけで、味が変だと感じ、体が落ち着かなくなった。そのため口の中の肉を吐き出し、自分が取った青菜を食べることにした。