第313章 椎名佳樹が反応した(13)

車は静かに椎名佳樹のいる病院の入り口に停まった。鈴木和香は人の往来が激しい病院の入り口を一瞥し、来栖季雄の方を向いて言った。「送ってくれてありがとう」

来栖季雄は車の窓の外の病院を見つめたまま、顎を引き締めていた。しばらくしてから、やっと「うん」と返事をした。

鈴木和香は少し間を置いて、来栖季雄に「じゃあ、先に行くわ。椎名おばさんが待ってるから」と言った。

「ああ...」来栖季雄の声は少し長く引き伸ばされ、喉が熱くなるのを感じながら、思わずアクセルを踏みそうになった。

鈴木和香がドアを引いたが、ロックされていることに気づき、振り返って来栖季雄に伝えた。

来栖季雄は「うん」と答え、慌ててドアロックを解除しようとしたが、誤ってヘッドライトをつけてしまい、急いで修正した。