鈴木和香が病室の入り口に着くと、中には白衣を着た専門医たちが大勢集まり、椎名佳樹の検査をしているところだった。
赤嶺絹代は傍らに立ち、生ける屍のような椎名佳樹を不安そうに見つめていた。
鈴木和香は静かに部屋に入り、赤嶺絹代の横に立って、小声で「椎名おばさん」と呼びかけた。
赤嶺絹代は横を向き、おそらく泣いていたのだろう、目が少し赤くなっていた。和香を見ると、すぐに手を伸ばして彼女の手を握った。「和香、来てくれたのね」
鈴木和香は軽く頷き、専門医たちに囲まれている椎名佳樹を見つめた。「佳樹兄、本当に反応があったんですか?」
「ええ、今日見舞いに来て、側で話しかけていたら、指が動いたの」赤嶺絹代は興奮気味に言った。「和香、佳樹が本当に動いたのよ。ここを握ってくれたの...」そう言いながら、赤嶺絹代は椎名佳樹が触れた右手の場所を和香に示した。「ここよ、佳樹がここに触れたの」