第315章 椎名佳樹が反応した(15)

車に乗る前、鈴木和香は自分のお腹の調子が数日前からよくないことを思い出した。来栖季雄は彼女が降りる前に、医者に診てもらうように注意していた。

鈴木和香は救急外来の数えきれないほどの人々を見て、自分の胃の具合もそれほど悪くないと感じ、結局面倒くさくなって受付に行くのをやめた。

胃の調子を崩したことは前にもあったが、薬を飲めば数日で良くなっていた。

赤嶺絹代からの一本の電話で、鈴木和香の今日の撮影は全て延期となり、一日中することがなくなった。車に乗ると、赤嶺絹代は尋ねた。「和香、どこに行きたい?」

鈴木和香は少し考えてから、他に行きたい場所も特にないことに気づき、最後に言った。「桜花苑にしましょう。」

赤嶺絹代は車を発進させながら時計を見ると、もう昼近くだった。「もう昼食の時間よ。和香、私と一緒に椎名家に来ない?随分と椎名家で食事してないでしょう。ちょうど椎名おじさんも不在だし、私一人で退屈だから、付き合ってくれない?食事の後は運転手に送らせるわ。」