第322章 2つの「ごめんなさい」(2)

休暇の四日目の昼頃、鈴木和香は下腹部に違和感を覚え、生理が来そうな感じがした。

彼女は幼い頃から生理痛に悩まされており、生理も不規則で、時には三、四ヶ月に一度しか来ないこともあった。病院で検査を受けたが、特に問題はなく、漢方薬で調整したところ、その半年間は確かに良くなったものの、その後また不規則になってしまった。薬を飲み続けるのは体に良くないと思い、別の病院で検査を受けたところ、子宮も卵巢も特に異常がなかったため、結局薬を飲むのをやめた。

しかし、鈴木和香の下腹部の違和感はしばらくで収まり、午後にはもう何ともなくなっていた。

夕食の時、千代田おばさんが尋ねた。「奥様、最近来栖社長は出張でいらっしゃるんですか?ずっとお帰りになっていないようですが。」

この質問に和香は少し戸惑い、しばらくしてから曖昧に「うん」と答え、食事を続けた。

夕食後、千代田おばさんは特別に赤嶺絹代からもらった燕の巣を温めてくれた。和香はそれを食べ終わり、二階に上がってソファーでテレビを見ていた時、また腹部に違和感を覚えた。冷えを心配して毛布を被り、ほらテレビを見ているうちに、うとうとと眠りに落ちてしまった。

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来栖季雄は実はこの数日間、桜花苑に戻ることはあった。ただし、車は門の外で止まっただけで、敷地内には入らなかった。

今日は宴会があり、終わった時はまだ九時半だった。主催者が場所を変えて麻雀をしようと誘ったが、季雄は何故か今夜は落ち着かない気持ちがあり、丁重に断った。

助手が地下駐車場から車を出して来て、来栖季雄のためにドアを開けたが、季雄は乗り込まずに車の横に立ち止まり、「鍵を渡してくれ。君は先に帰っていいよ」と言った。

助手がタクシーで帰った後、季雄は車に乗り込んだ。なぜか心臓の鼓動が速くなり、息苦しさを感じた。窓を開けると少し楽になったが、まだ気分が悪かったので、とりあえず車を発進させ、気の向くままに走らせた。

十分ほど走った後も、季雄の胸の重苦しさは全く和らがなかった。そこで携帯を取り出し、桜花苑に電話をかけた。

千代田おばさんは発信者番号で彼の電話番号を確認したようで、電話に出るなり「来栖社長」と呼びかけた。

季雄は「うん」と返事をし、すぐに「和香は大丈夫か?」と尋ねた。