第323章 2つの「ごめんなさい」（3）

千代田おばさんは階下に立ち、来栖季雄の一連の速すぎて反応できないほどの行動を見て、長い間呆然としたまま、我に返れなかった。

来栖季雄は洗面所の壁を回り込むと、ソファーに座っている鈴木和香が一目で見えた。彼の足取りは急に止まり、寝室を見回した。

壁に掛かったテレビでは、CMが流れていた。

窓が開いていて、夜風が入り込み、カーテンが揺れていた。

鈴木和香は白い毛布を掛けて、静かに眠っていた。

寝室全体はいつもと変わらず、何の違いもなく、静かで落ち着いた雰囲気だった。

来栖季雄の高鳴っていた心臓は徐々に元に戻り、長いため息をつくと、そっと歩いてソファーの前まで行き、身をかがめて和香の手元にあったリモコンを取り、テレビを消した。それから横を向いて、和香の寝顔をしばらく見つめ、手を伸ばして彼女の顔を覆う長い髪に触れた。指先が彼女の頬の柔らかさに触れ、その感触は柔らかく繊細で、とても現実的で、来栖季雄の一晩中の動揺がようやく完全に収まった。

すべては彼の心の不安が引き起こした慌てだったのだ。おそらく最近の彼女の冷たい態度か、あるいは椎名佳樹が目覚めそうだということで、彼の気持ちが複雑になり、今夜このような感覚になったのだろう。

来栖季雄がそこまで考えて、自分の背中がいつの間にか冷や汗で濡れていることに気づき、心の中には危機を脱したような安堵感があった。思わず苦笑いを浮かべながら、和香を見つめる目には深い愛情が浮かんでいた。

おそらく、この世で彼女だけが、彼をこれほどまでに慌てふためかせ、大げさに反応させ、理不尽な行動を取らせることができるのだろう。

来栖季雄は指先で優しく和香の頬を撫で、身を屈めて彼女の眉間にキスをし、そしてソファーから抱き上げ、慎重にベッドに寝かせ、布団を丁寧にかけてやった。

冷や汗をかいた来栖季雄も少し不快に感じ、スーツの上着を脱いでソファーに適当に投げ、ネクタイを緩めながら洗面所に向かおうとした。二、三歩歩いたところで、突然足を止めた。眉間にしわを寄せ、再びソファーの方を振り返ると、和香が先ほど掛けていた白い毛布に、鮮やかな赤い染みがついているのが見えた。

来栖季雄は眉間に深いしわを寄せ、二歩後ずさりしてソファーの前に戻り、毛布を手に取った。それは明らかに血痕で、まだ温かく湿っており、明らかに今しがた付いたものだった。