第350章 2つの「愛してる」(6)

来栖季雄は長い脚を組んで座り、その姿は優雅で落ち着いていた。記者がこの質問をするのは、ゴシップになりそうな答えを引き出したいからだと分かっていた。彼は記者の質問に対して、真剣に考えているように見せかけてから、とても曖昧な概括をした:「才能のある女優だ」

記者は諦めきれず、さらに追及した:「演技の才能以外に、何かありますか?」

来栖季雄は、このような取材を何度も経験してきており、とっくに対応術を完璧に身につけていた。そこで横を向いて、鈴木和香を一瞥してから、誰が見ても分かるような答えを返した:「若くて、綺麗だ」

記者は来栖季雄が話をはぐらかしているのを分かっていたが、それでもその答えに思わず笑ってしまった。そして来栖季雄からの情報収集を諦め、芸能界に入ったばかりの鈴木和香の方を向いた:「鈴木君、ご存知かと思いますが、来栖社長はネットで国民的夫と呼ばれ、6年連続で影帝を獲得しています。芸能界に入ったばかりで彼と共演できるなんて、どんな気持ちですか?」

鈴木和香は微笑みを保ちながら、3秒間の間を置いてから答えた:「とても興奮しています」

記者はさらに質問した:「では鈴木君は、来栖社長と長期間撮影をされて、どんな方だと感じましたか?」

鈴木和香は先ほどの来栖季雄の答え方を真似て言った:「演技が素晴らしく、共演者に無形のプレッシャーと向上心を与えてくれます」

記者は鈴木和香に追及し続けた:「ネット上では多くのファンが来栖社長についてもっと知りたがっています。鈴木君は来栖社長と長く共演されていますが、他の人が知らない趣味や習慣などありましたか?」

鈴木和香は芸能界での取材経験はなかったが、もし来栖季雄の趣味や習慣について答えれば、それは全世界に自分と来栖季雄の関係が深いことを告げることになると理解していた。そこで3秒間黙ってから、微笑みながら答えた:「来栖社長はとても忙しい方で、私たちが撮影の合間に休憩している時も、現場でパソコンを抱えて仕事をしていました。メイクの時も、よく誰かと電話で業務の話をしているのが聞こえてきました」

記者は何度も罠を仕掛けたが、何も引き出せなかった。ゴシップになるような話題が得られないと分かり、諦めて他の質問に移った:「今後また機会があれば、鈴木君は来栖社長と共演したいですか?」

鈴木和香は即答した:「はい」