第344章 2つの「ごめんなさい」(24)

来栖季雄がこの質問に答えた時、鈴木和香は彼の目の奥に一瞬殺気が走るのを見た。

和香は季雄が嘘をついていることを知っていた。彼が嘘をついたのは、自分をごまかし、真実を話したくなかったからだと分かっていた。彼がなぜそれほど強い反応を示したのか理由は分からなかったが、興味はあったものの、彼が話さないのなら無理に聞こうとはしなかった。

きっと彼にとって、とても辛いことなのだと分かっていたから。

どんな女性でも、男性から冷たくされたり優しくされたりを繰り返されると、不安定な気持ちになるものだ。彼が自分のことを好きではないと分かっていても、関係が良好になると、つい心が揺らいでしまう。彼の誕生日の夜、彼女は現実に引き戻された。それ以来、自分を欺かないようにと言い聞かせ続けていた。

でも、本当に人を愛するというのは、どういうことなのだろう?

その人が自分を愛していないことを知っていて、傷つけられる可能性があることを知っていても、その人が苦しんでいるのを見ると、心配せずにはいられず、助けたいと思ってしまうこと。

その人の幸せを願うから。その人が悲しむと、自分はもっと悲しくなるから。

和香は自分に根性がないことを知っていた。季雄の誕生日の夜、あんなことを言われた後は、きっぱりと彼への愛を断ち切るべきだったのに、それができなかった。十三年間この男性を愛し続け、良いところも悪いところも全て愛してきた。馬鹿だと言われようが、愚かだと言われようが、この瞬間、何日も保ってきた冷たい態度は全て心配へと変わった。思わず優しい声で彼に言った。「もう悲しまないで。どんなに大変なことでも、必ず過ぎ去るわ。これからは怒っていても、自分を傷つけないでね。」

時として、愛する人には不思議な力があるもので、たった一言で心の最も柔らかい部分に触れることができる。

和香のこの言葉に、季雄は温かい水に包まれたような気持ちになり、心の中に言い表せない感動が広がった。

彼は振り向いて彼女を見つめ、彼女の腕に貼られたガーゼを見て、そして彼女の頬を見た。何か言いたかったが、何も言葉にできず、最後に突然手を伸ばして、彼女を自分の胸に抱き寄せた。

彼は彼女をしっかりと抱きしめ、目が熱くなったが、心は温かかった。

季雄は思わず小さな声で言った。「ごめん、怪我させてしまって。」