第368章 椎名佳樹が目覚めた(8)

遠く離れていて、もう一本の道路が工事中だったため、二人が何を話しているのかは全くわからなかったが、二人の表情を見る限り、とても楽しそうに会話を交わしていた。

執事:「和香様はあの雑種とも仲が良さそうですね。若様は和香様のことがお好きなのに、やっと目覚められたばかりなのに……」

執事がそこまで言った時、丁度鈴木和香が首を傾げて来栖季雄を見つめ、愛らしく微笑んでいるのが目に入った。彼女は急にブレーキを踏み、車は通りに停止した。しばらくして、彼女は言った:「和香様は、今あの雑種のことを好きになってしまったのでしょうか?若様はどうすれば……」

赤嶺絹代の表情が一瞬にして凍りついた。車の中で黙って窓の外の二人を見つめ続け、来栖季雄が鈴木和香を背負って団地に入っていくまで視線を外さなかった。運転席に座っていた執事は怒りを込めて言った:「若様があの雑種にあれほど良くしてくださったのに、こんな仕打ちを……」