鈴木和香は自分が人工中絶手術を受けたことを完全には確信していませんでした。そのうえ、このような手術は通常プライバシーに関わることで、一生漏らすことはないはずです。そのため、和香は病院に向かう途中、市立総合病院に勤務している友人に連絡を取り、その友人に頼んで産婦人科の医師を紹介してもらいました。
友人は仕事中だったため、直接和香を案内することはできませんでしたが、すべての手配をしてくれました。和香は友人から教えられた住所に従って、産婦人科の医師を訪ねました。
来院する前から、産婦人科の医師は彼女の用件を知っていたので、彼女を見るなり名前を尋ねました。和香が名前を告げると、医師は彼女の名前と身分証番号を入力して記録を検索しましたが、結果は「該当する記録なし」と表示されました。
「コンピューターには記録が見つかりません」と医師は画面を指さしながら言いました。
和香はコンピューター画面に表示された内容を見て、眉間にしわを寄せました。もしかして、あの宅配便は誰かのいたずらだったのでしょうか?
和香は最後の確認をするかのように続けて尋ねました。「何か間違いがあるのではないでしょうか?」
医師は首を振りました。「それはありえません。このようなプライバシーに関わることだからこそ、すべての手術は記録に残されます。将来、法的な問題が発生した場合の証拠として必要だからです。あなたの手術情報が見つからないということは、当院で人工中絶手術を受けたことがないということです」
和香は医師が確信を持って話すのを見て、心が落ち着きました。医師にお礼を言って、その場を去りました。
産婦人科の建物を出た和香は、友人に電話をかけてお礼を言うことを忘れませんでした。友人が事情を尋ねると、和香は笑いながら勘違いだったと説明しました。友人は電話の向こうで笑いながら、きっと誰かがいたずらで人工中絶の書類を送ってきたのだろう、と言い、自分が人工中絶を受けたかどうかも分からないなんて、どれだけぼんやりしているのかと冗談を言いました。
和香は友人の冗談に対して、あまり詳しく説明せず、さらに二、三言葉を交わしただけで電話を切りました。
人工中絶手術を受けたことがないと分かったので、誰がこんないたずらをしたのか気になりましたが、気持ちはかなり軽くなりました。