第382章 私のどこが気に入らないの?(12)

鈴木和香の顔色が悪くなり、看護師を見つめたまま黙っていた。

看護師は深く息を吸い込んで、続けて言った。「来栖社長があなたを抱きかかえて病院に来られたんです。医師の診察で妊娠2ヶ月とわかりましたが、来栖社長がサインをして、医師に中絶手術をさせたんです。」

鈴木和香の目に怒りの色が浮かんだ。「あなたの目的は何なの?私はさっき病院に確認したけど、あなたの病院で中絶手術なんてしていないわ!」

「私には何の目的もありません。嘘もついていません。ただ良心が痛むだけです。病院で手術の記録が見つからないのは、来栖社長の秘書が病院の上層部に連絡を取って、記録を消去したからです。そして、その夜あなたの手術を担当した医師と看護師に口止め料を払いました。医師には20万円、看護師には10万円です。」看護師はそう言いながら、自分の携帯を取り出し、ネットバンキングを開いて、振込記録を鈴木和香に見せた。「私、人生で初めてこんなことをしました。お金をもらったからには、このことは胸に秘めておこうと思っていたんです。でも最近、悪夢を見続けて...本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。あの夜、私は共犯者として、あなたが気付かないうちにあなたの子供を...」

鈴木和香は看護師の携帯画面に表示された来栖季雄の秘書の名前を見つめ、目の中の怒りは驚愕に変わっていた。

「宅配便に何も情報を残さなかったのは、怖かったからです。あなたが宅配便を受け取ったら必ず病院に来ると分かっていたので、早めに病院の入り口で待っていました。」

「私の話を信じられないなら、別の病院で検査してみてください。手術してまだ1ヶ月も経っていないので、子宮も回復していません。エコー検査をすれば、すべての真相が分かります。」

「それに、今日はあなたの術後検査の日なんです。でも来栖社長は、あなたが何かに気付くのを恐れて、検査に連れて来ないかもしれません。だから、別の病院で検査を受けてみるのがいいと思います。結局、体はあなたのものですし、私の話が本当かどうかも確かめられます。」

「私が言うべきことは全て話しました。これで少しは心が晴れます。最後にもう一度言わせてください。本当に申し訳ありませんでした。」

窓の正面をただ見つめ、まったく反応を示さない鈴木和香を見て、看護師はため息をつくと、車のドアを開けて降り、立ち去った。