来栖季雄は浴室のドアが閉まるのを待ってから、テーブルの上のケーキを手に取り、階下に降りて、千代田おばさんにケーキを冷蔵庫に入れてもらい、家を出た。
冷たい夜風が吹き、少し気分が楽になった。無意識にポケットからタバコを取り出し、一本を口にくわえ、ライターで火をつけようとした時、今夜病院で鈴木和香が言った言葉を思い出した。「タバコは体に悪いから、できれば吸わないで、禁煙してね」
彼の動きが一瞬止まり、最後には口にくわえていたタバコを取り出し、タバコケースに戻した。ポケットに入れようとして少し躊躇した後、ライターと一緒に近くのゴミ箱に投げ入れた。
来栖季雄は家の外に約十分間立ち、心身ともに落ち着いてから、家に戻り階段を上がった。
寝室のドアを開けると、浴室からザーザーという水音が聞こえてきた。来栖季雄はその音を聞いて胸が騒ぎ、やっと抑えていた邪念がまた湧き上がってきた。彼は直接更衣室に入り、カジュアルな服を取って寝室を出て、隣の部屋で冷水シャワーを浴びた。