鈴木和香は来栖季雄をじっと見つめていたが、季雄は少し困ったように軽くため息をつくと、突然手を伸ばして和香を自分の胸に引き寄せ、彼女の体を抱きしめたまま動けないようにして言った。「もう遅いから、寝よう」
季雄の抱擁で、和香の落ち着かない心は奇跡的に静まっていった。二人の服を通してでも、彼の体温を感じることができた。揺らめく蝋燭の光の中、柔らかな雰囲気に包まれながら、彼の腕を枕にして、耳元で聞こえる彼の心臓の鼓動に、この上ない安心感を覚えた。
彼女の頭の中には、自然と最近起きた出来事が浮かんできた。以前と同じように表面上は冷淡そうに見えても、彼が彼女に対して示す気遣いは明らかだった。今夜、金色宮で彼は彼女の手を取った。それに、彼女を背負って家まで連れて帰り、誕生日を祝ってくれた……今までこんなことは一度もなかった。
どうして急に彼は彼女に対してこんなに変わったのだろう?
和香は考えているうちに、大胆な仮説が頭に浮かんだ。もしかして、こんなに長い間一緒にいたから、彼は彼女のことを好きになったのかもしれない?
この考えが頭に浮かんだ途端、和香の思考はさらに混乱し、なぜか緊張してきて、思わず目を開けて季雄を見つめた。
男性は目を閉じ、穏やかな表情で、まるで眠りにつこうとしているかのようだった。
彼の眉間には、生まれつきの冷淡さと高慢さが残っていた。
和香は季雄をじっと見つめているうちに、心の中である衝動が湧き上がってきた。その衝動は次第に強くなり、ついに抑えきれずに彼の名前を呼んだ。「季雄?」
目を閉じていた季雄は、和香の声を聞くと、まず反射的に「うん」と返事をし、それから目を開けた。
彼の視線と合った途端、和香は心が慌てだし、口まで出かかっていた「私のことが好きなの?」という言葉が喉につかえてしまった。少し冷静になると、季雄が以前、誰を好きになろうと、この先一生彼女にはならないと言っていたことを思い出した。これは自分が考えすぎているのかもしれない。
季雄は和香が長い間反応しないのを見て、眉間にしわを寄せ、再び口を開いた。「どうした?」
和香は我に返り、季雄を見つめながら、しばらく心の中で葛藤した後、より婉曲な言い方を選んで話し始めた。「眠くない?」