第391章 さようなら青春、さようなら私の愛(1)

鈴木和香は医師の指示に対して、微笑みながら頷き、立ち上がって検査結果を受け取り、医師に別れを告げた。

鈴木和香が医師の診察室を出たとき、ちょうど若い女性が彼女の前を通り過ぎた。その若い女性は電話をしており、おそらく夫に電話をかけていて、妊娠二ヶ月だと伝えていた。妊婦はみな繊細になるのか、話し方には甘えた調子が混ざっていた。

鈴木和香はその女性のお腹を見た。まだ平らで、思わず自分のお腹に触れた。彼女の子供が取り除かれたのも二ヶ月のときで、あの女性のお腹と同じように、何の兆候も見えなかった。

そうだ、自分が妊娠していたことすら知らなかったのに、来栖季雄はどうやって知ったのだろう?

あの夜、彼女は確かに桜花苑で普通に眠っていて、次の日目覚めたときも桜花苑にいた。その間の十数時間の間に、彼女の子供がいなくなった……

来栖季雄が署名した中絶同意書、あの看護師の携帯銀行の振込記録、来栖季雄の財布の中の検査報告書、そして今この手にある超音波検査の結果……一つは偶然かもしれない、二つも偶然かもしれない。でも三つ、四つは?まだ偶然と言えるのだろうか?

来栖季雄は明らかに彼女の妊娠を知っていた。彼女は中絶手術を受けた。千代田おばさんは翌日、彼女に生理が来たと言った……来栖季雄は本当に手が込んでいる。みんな真実を知っていて、母親である彼女だけが何も知らなかった!

鈴木和香の目には再び涙が溜まった。彼女は急いで病院の建物を出て、建物の裏へ回り、道に沿って奥へ進んでいった。人気のないところまで来て、やっと空気の抜けた風船のように、しゃがみ込んで声を上げて泣き始めた。

昨日の朝、彼の署名入りの中絶同意書を見てから、今別の病院で本当に中絶手術を受けたことを確認するまでの二十四時間、彼女はずっと感情を抑え続けていた。今やっと、自分の感情を解き放つことができた。

彼女は憎しみで胸が一杯だった。来栖季雄があんなにも冷酷だったことが憎い。自分が妊娠に気付かなかったことも憎い……でももし本当に最初から子供に気付いていたとしても、来栖季雄は認めてくれただろうか?

さっき椎名おばさんが言っていた……来栖季雄が椎名佳樹はいつ退院できるかと電話で尋ねていたと……一番早い時期に……