第395章 さようなら青春、さようなら私の恋(5)

家の入り口に近づいた時、来栖季雄は隣の鈴木和香の服装を見て、そして自分のスーツ姿を見て、足を止めた。「着替えてくる」

鈴木和香は頷いて、一人で玄関に向かい、まず靴を履き替えようとした。彼女は最初、新しく買ったばかりの白いヒールのサンダルを履こうと思ったが、右足を履いた瞬間、動きを止め、結局靴を脱いで、下駄箱を開けて、しばらく中を見た後、厚底のスニーカーを取り出した。

このスニーカーは、今年の春に鈴木夏美と一緒に山登りに行く約束をした時に買ったものだった。でも、ほら予期せぬことが起きて、山登りは中止になり、靴は箱に入れたまま下駄箱に入れられ、それ以来触れることもなかった。

鈴木和香はスニーカーを履き、姿見の前に立って、二度見してから、最後にストレートの長い髪を高いポニーテールにまとめ、千代田おばさんに黒いヘアゴムを持ってきてもらって結び、満足そうにバッグを手に取って先に外に出た。

来栖季雄は着替えを済ませて出てきた時、入り口に立っている鈴木和香を見た。黒髪が青春らしい可愛らしいポニーテールになっていて、一瞬我を忘れてから、車のキーを取り出してロックを解除し、階段を降りて車のドアを開けた。

午後二時過ぎは、夏の日差しが最も眩しい時間帯で、来栖季雄はディオールのサングラスをかけ、とてもシンプルな白いシャツを着ていた。シャツの袖は適当にまくり上げられ、襟元のボタンも二つ開いていて、ベージュのパンツと合わせて、日差しの中で目を奪われるほど美しく見えた。

鈴木和香は彼を約五秒ほど見つめてから近づき、来栖季雄の胸の前を通り過ぎて車に乗り込む時、何年も変わらないあの控えめな香りを嗅いだ。

来栖季雄はエンジンをかけ、エアコンがゆっくりと送風を始め、カーステレオも鳴り出し、車はゆっくりと桜花苑を出て、道路を走り始めた。

東京都の街路樹は背が高く、大部分の日差しを遮っていて、葉と葉の隙間から細かな光の点が漏れ落ちてくるだけだった。車が進むにつれて、明るさと暗さが繰り返し入れ替わっていた。

車内では穏やかな英語の曲が流れていて、心が自然と落ち着いていった。

かなりの時間が経って、信号待ちの時に、来栖季雄は振り向いて鈴木和香の装いを見た。「午前中に美容院に行ったの?」