第396章 さようなら青春、さようなら私の恋(6)

鈴木和香は来栖季雄が黙っているのを見て、自分も黙ったままでいた。車内は1分ほど静かだったが、車は前方の駐車場に入った。

映画のチケットは既に助手が来栖季雄に渡していた。車から降りる時、彼は助手に用意させた毛布と枕の入った袋も持って行った。

映画の開始まであと10分。チケットチェックの前に、鈴木和香はカウンターに走って行き、大きなポップコーンと2本のコーラを買った。二人が上映室に入って席に着くと、ちょうど映画が始まり、それまでざわついていた上映室は一瞬にして静まり返った。

鈴木和香はポップコーンを来栖季雄と自分の席の間に置き、スクリーンから目を離さずに、時々ポップコーンを手に取って口に入れた。

上映室のエアコンが少し強めに効いていて、映画が始まって約10分後、来栖季雄は寒さを感じ始めた。彼は用意しておいた毛布を袋から取り出し、鈴木和香の足にかけた。

鈴木和香は振り向いて来栖季雄を見た。彼の端正な横顔が彼女の鼻先にまで迫り、心臓が一拍飛び跳ねた。彼が毛布をかけ終わって自分の席に戻るまで、彼女は慌ててポップコーンを一掴み口に詰め込んだ。そして隣の来栖季雄が座ってから今まで一度もポップコーンに手を付けていないことに気づき、腕で来栖季雄の腕を軽く突いて、ポップコーンを指さした。

ポップコーンの横にはコーラが置いてあった。来栖季雄は鈴木和香がキャップを開けて欲しいと思っているのだと考え、コーラを取って開け、ストローを差し込んで鈴木和香に渡した。

鈴木和香はコーラを受け取り、首を傾げて彼の耳元に近づき、小声で言った。「ポップコーン食べないんですか?」

来栖季雄は頷いて了解の意を示し、二人は再び映画に集中した。時々、鈴木和香は隣の来栖季雄がポップコーンを一粒つまんでいるのを感じた。

映画が半分ほど進んだところで、かなりセクシーなシーンが始まった。多くのカップルが映画館をデートスポットに選ぶため、そのようなセクシーなシーンは、上映室の雰囲気を一気に艶めかしいものに変えた。情熱的なカップルの中には既にキスを始める者もいて、鈴木和香は後ろの席のカップルがキスをする時の甘い声が、映画の吐息と混ざり合って聞こえ、より一層顔を赤らめさせた。