第397章 さようなら青春、さようなら私の恋(7)

鈴木和香は突然静止し、来栖季雄と視線が絡み合った。映画館では艶めかしい音が響き続け、来栖季雄の和香への視線が熱を帯びていった。上映室は冷房が効いているのに、和香は足の裏から這い上がってくる熱を感じていた。

スクリーンの露骨なシーンが終わり、上映室でキスをしていたカップルが離れ、甘い空気が徐々に消えていった。しかし和香と季雄は依然として見つめ合ったまま。突然の激しい音響―アクションシーンの音―に二人は我に返った。和香は反射的にポップコーンから手を離そうとしたが、季雄の方が早く、彼女の手をしっかりと掴んだ。

和香の体が少し強張ったが、季雄の手から自分の手を引き抜くことはせず、ただスクリーンの方を向いた。季雄は彼女の横顔をしばらく見つめた後、同じようにスクリーンに目を向けた。長い間ストーリーを見逃していたため、再び見始めても展開についていけなかったが、二人はまるで物語に没頭しているかのように真剣に見つめていた。実際には、お互いの心臓が普段以上に激しく鼓動していたのだが。

映画が終わり、観客が次々と退場し始めた。季雄と和香はまだ席に座ったまま動かず、手を握り合っていた。上映室が空っぽになり、二人だけが残った時、清掃員がゴミを拾いに入ってきて、やっと二人は名残惜しそうに手を離し、暗黙の了解で立ち上がり、席の荷物を片付けて、前後して出て行った。

映画を見終わった時には既に5時で、夜8時には二人の最後のシーンがあったため、街で食事をする時間はなく、スーパーで簡単な食べ物を買っただけで、季雄は和香を乗せて撮影現場に戻った。

道中、二人は一切会話を交わさなかった。表情は普段通り穏やかだったが、心の中では映画館での40分に及ぶ手の握り合いが残っていた。

撮影現場に戻った時には既に7時で、季雄と和香は直接メイクルームに向かった。他の俳優たちは既にメイクを終え、セットで感覚を掴もうとしていた。和香と季雄は背中合わせでメイク台に座り、メイクさんに鏡を見るように言われる度に、二人の視線が偶然に重なり、そのたびに午後に握り合っていた手のひらに、かすかな熱を感じた。

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