第398章 さようなら青春、さようなら私の恋(8)

来栖季雄は鈴木和香よりも早くメイクが終わった。彼がメイクを終えた時、和香はまだ半分しか終わっていなかった。彼が立ち上がり、メイクアップアーティストが仕上がりを確認している時、和香の携帯が鳴り始めた。

和香の携帯はテーブルの上に置いてあり、来栖季雄は着信音を聞いて思わず横を向き、画面に表示された「椎名おばさん」という文字を見た。

和香はメイクアップアーティストに申し訳なさそうな表情を見せながら、テーブルの上の携帯を取り、通話ボタンを押した。「椎名おばさん?」

メイク室には今や数人しか残っておらず、とても静かだった。来栖季雄は和香の後ろに立っており、電話の向こうから聞こえる赤嶺絹代の声がはっきりと聞こえた。「和香、今夜が最後の撮影シーンよね?明日は空いてる?」

和香が軽く「うん」と返すと、赤嶺絹代の声が再び聞こえてきた。「和香、明日は佳樹が退院する日なの。迎えに来てあげてね。」