赤嶺絹代は二人が久しぶりに再会した恋人同士で密話をしたがっているのだと思い、すぐに寛容な笑みを浮かべて執事に目配せをした。執事は察して使用人たちと共に部屋を出た。
赤嶺絹代は最後に部屋を出る際、ドアを閉める前に鈴木和香と椎名佳樹を一瞥し、少し考えてから携帯を取り出し、こっそりと写真を数枚撮ってからドアを閉めた。
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来栖季雄は朝早くから環映メディアに来ていた。午前中の会議では彼の注意力は著しく散漫で、しばしぼんやりとしていたため、最後には会議の出席者全員が彼の様子がおかしいことに気付いた。
ようやく会議が終わり、オフィスに戻ると、分厚い書類の山が待っていた。デスクに座ったものの、一文字も頭に入らず、頭の中は今日鈴木和香が椎名佳樹を退院させに行くことでいっぱいだった。