第418章 彼の静かな寄り添い(5)

来栖季雄は車に寄りかかり、目を閉じた。まだ明るく光る携帯の画面には、鈴木和香が先ほど投稿したSNSの投稿が表示されていた。

来栖季雄は運転手に車を中に入れさせず、桜花苑別荘の入り口に停めただけで、一人で車を降り、中へと歩いていった。

別荘の門は固く閉ざされていた。彼はポケットを探り、鍵を取り出した。それは鈴木和香が去った日に、彼の車の中に置いていった鍵だった。彼はまだはっきりと覚えていた。この鍵を彼女に渡した時、まだそれほど親しくなかった彼は、表情を冷淡に保とうと努力し、うっかり彼女の前で内心の興奮を漏らさないように気をつけていたことを。

鍵を開け、鉄の門を押し開けると、来栖季雄は中に入った。千代田おばさんがいなくなり、庭は半月も掃除されていなかった。鈴木和香が去った日、庭一面に咲き誇っていた花は、今では地面に散り落ちていた。

来栖季雄は落ちた花を踏みながら、玄関まで歩き、暗証番号を入力し、ドアを開けて中に入った。

家の中は空っぽで、彼の心と同じだった。階段を上がり、寝室に入ると、そこは鈴木和香が去った日のままだった。窓は開いたままで、先日の豪雨で雨水がベランダ一面に降り注ぎ、泥の跡が残っていた。

静まり返った部屋は、来栖季雄の心臓を圧迫するようだった。彼はクローゼットの床に置かれた袋を見て、鈴木和香が去る前に言った言葉を思い出した:中には彼女が要らなくなった服が入っていた。

来栖季雄は少し立ち止まってから、近づいて袋を開け、中の服を一枚一枚取り出し、ハンガーにかけて、自分の服の隣に吊るした。

袋の中には鈴木和香の洗面用具も入っていた。彼はそれらを蛇口で洗い、元の場所に戻した。

全てを片付け終えると、来栖季雄の心はやっと少し落ち着いた。彼女が要らないと言ったこれらのものを元の場所に戻すことで、まるで彼女がまだこの別荘に住んでいるかのようだった。

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椎名佳樹は退院後、丸々半月も椎名家の屋敷に閉じ込められ、外出することができなかった。庭を散歩するだけでも、執事や赤嶺絹代が大騒ぎして使用人を後ろにつけさせ、少しでも異変が起きないよう気を配っていた。