第432章 彼の静かな寄り添い(19)

鈴木和香は椎名佳樹に十数回電話をかけたが、全然繋がらなかった。最後には諦めて、直接メッセージを送り、金色宮を出て、道端でタクシーを待った。

金色宮は東京の中心部に位置し、高級な消費施設であるため、ここを訪れる人々はほとんど専用車での送迎で、タクシーが来ることは稀だった。

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来栖季雄は足早にロビーへ向かい、スーツの上着を羽織りながら、ロビーを見回したが、鈴木和香の姿は見当たらなかった。ほとんど小走りで金色宮の回転ドアを飛び出した。

ドアマンは来栖季雄を知っていて、彼が出てきた時に丁寧に挨拶をした。「来栖社長」

来栖季雄はドアマンの挨拶を全く無視し、周りを見渡してから直接道端へ向かった。速く歩きすぎたせいで、来栖季雄の呼吸は乱れていた。彼は荒い息を吐きながら、金色宮の正面玄関から約200メートル先の街灯の下に立っている鈴木和香を見つけた。