第431章 彼の静かな寄り添い(18)

車は地下駐車場に停まり、椎名佳樹は車から降りて、そのままエレベーターのボタンを押し、入り口で松本雫が入るのを待ってから、自分も続いて入り、階数ボタンを押した。

エレベーターは上昇を続け、目的の階に到着すると、ドアが開いた。椎名佳樹は左側のドアの前まで歩き、暗証番号を入力してドアを開け、やはり松本雫が入るのを見届けてから、自分も入った。

椎名佳樹はドアを閉め、車のキーを玄関に投げ捨て、松本雫を二度見つめた。一言も発せず、突然手を上げると、彼女の顔に激しく平手打ちを食らわせた。

その一撃は予告もなく、力も強く、まったく防ぐ術もなかった松本雫は、その衝撃で一瞬にして床に倒れ込んだ。

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十一時になり、皆は解散した。

椎名佳樹は十時に個室を出て以来、二度と戻ってこなかった。

他の人々は皆かなり酒を飲んでおり、タクシーで帰る者は帰り、迎えが来た者は迎えられて帰った。鈴木和香は、ちょうど仕事を終えて迎えに来た田中大翔の車に鈴木夏美を乗せた後、携帯を取り出して椎名佳樹に電話をかけたが、何度かけても誰も出なかった。

来栖季雄のアシスタントがトイレから出てきた時、金色宮のロビーに立っている鈴木和香を見かけ、挨拶をした。「君。」

鈴木和香は電話を収め、アシスタントに軽く頷いた。

アシスタントは鈴木和香が一人でここに立っているのを見て、少し不思議に思い、余計なことを聞いた。「君は椎名様と一緒にいらっしゃったのではないですか?なぜお一人でここに?」

鈴木和香は来栖季雄のアシスタントがどうしてそれを知っているのか不思議に思った。

アシスタントは続けて言った。「椎名様が会社の下で君をお待ちの時に、偶然お会いしたものですから。」

鈴木和香は理解したように唇を引き締めて微笑み、言った。「彼がどこに行ったのか分からなくて、待っているんです。」

アシスタントは「ああ」と納得したように声を上げ、それから丁寧に言った。「君、私にはまだ用事がありますので、先に失礼させていただきます。」

鈴木和香は微笑んで頷いた。

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アシスタントは個室のドアを開け、麻雀卓に座っている来栖季雄を一瞥した。

他の三人は皆若い女の子を膝に乗せていたが、彼だけは気高く、一人で座っていた。