第430章 彼の静かな寄り添い(17)

部屋の中にいた人々は一瞬凍りつき、椎名佳樹の隣に座っていた男性が慌てて説明を始めた。「椎名坊さん、誤解されていますよ。松本さんは我々のビジネスパートナーで、そういった女性ではありません。」

支配人も慌てて口を開いた。「そうですよ、椎名坊さん。松本さんは私どものお客様です。」

椎名佳樹は周りの言葉に全く意に介さず、考えを変える様子もなく、松本雫を指差しながら、支配人に向かって言うように見せかけて、実は松本雫に向かって言った。「値段を言いなさい。夜食を食べに行くのに、いくらだ。」

最初は少し混乱していた松本雫も、今では状況を完全に理解していた。彼女は眉一つ動かさず、ただ静かにそこに立って、椎名佳樹を見返していた。

「それは...」支配人は椎名佳樹も松本雫も怒らせたくなかったので、二言だけ言って両者を交互に見ながら、困った表情で椎名佳樹に笑顔を向けて言った。「椎名坊さん、私が連れてきたこちらの女性たちをご覧ください。皆さん新人で綺麗ですよ。どなたがお好みですか?皆さん夜食にお連れできます。」

「ここの女の子と食事に行くなら五千円だ。どうだ、この値段じゃこの子は動かないのか?」椎名佳樹は支配人の言葉を完全に無視して、直接尋ねた。彼も同様に松本雫を見返し、しばらくしてからまた言った。「それとも五万円欲しいのか?」

椎名佳樹は意図的に「五万円」という言葉を強調し、松本雫の目には明らかな動揺が見えた。

椎名佳樹は唇を歪めて笑い、視線を支配人に向けながら、言葉は松本雫に向けて言った。「五万円でも承知しないのか?じゃあ五十万円?五百万円...」

支配人は慎重に口を開いた。「椎名様、それは私の判断できる範囲を超えています。」

そう言って、支配人は横に立っている松本雫を一瞥した。

椎名佳樹は今度は松本雫に反応する時間を全く与えず、すぐに強い口調で言った。「金じゃなくて他のものが欲しいのか?図に乗るな...」

椎名佳樹の言葉が終わらないうちに、松本雫は突然花のような笑顔で口を開いた。「夜食くらい、行きますよ。」

松本雫は芸能界で、ほとんど男性と二人きりで食事に行くことはなく、どんなに高額な報酬でも動かなかった。せいぜい今夜のような、ビジネスを装った席に参加する程度だったので、彼女のこの言葉に部屋中の人々が驚いた。