第450章 なぜ私の子供を望まなかったの?(10)

来栖季雄が出かけてから約三十分後、空に稲妻が走り、すぐに轟く雷鳴が響いた。ぼんやりしていた鈴木和香は驚いて体を震わせ、洞窟の入り口に大粒の雨が落ちてくるのを目にした。

森が生い茂っているため、地面に落ちる雨滴はそれほど多くなかった。

また一筋の稲妻が走り、鈴木和香は心配になってきた。来栖季雄が落雷に遭わないかと不安になり、地面に手をついて何とか立ち上がり、洞窟の入り口に向かおうとした時、たくさんの枝を持った来栖季雄が戻ってきた。鈴木和香は服の襟をつかみながら、また奥の方に座り直した。

来栖季雄は枝を追加して火を強くし、持ち帰った枝の中から果物を取り出して鈴木和香に投げた。「少し食べて」

鈴木和香は赤くて林檎に似ているけれど林檎ではない果物を見て、少し躊躇してから手を伸ばして取った。