第482章 婚約解消(2)

鈴木和香は少し食べ続けるのが恥ずかしくなったが、エビの身は全部剥いてしまった。

テーブルが少し大きかったので、鈴木和香が来栖季雄の茶碗に入れようとすると、お尻を椅子から離して、手を大きく前に伸ばさなければならなかった。

来栖季雄は椅子に寄りかかって電話をしていたが、注意は常に鈴木和香に向けられており、特に少女がエビを食べ始めた時、目元に温かみが宿った。

来栖季雄は突然、鈴木和香が手を伸ばして自分の方に差し出すのを見て、鈴木和香が自分にエビを食べさせようとしていると思い、少し驚いたような表情を浮かべながら、まるで恐縮したかのように身を前に傾け、口を開けて、鈴木和香が本来茶碗に入れようとしていたエビの身を咥え取った。

鈴木和香は男性の温かい唇が自分の指に触れるのをはっきりと感じ、しびれるような感覚と共に、手の中のエビの身が消えた。

彼女は食べさせるつもりじゃなかったのに、彼の茶碗に入れようとしていただけなのに……

鈴木和香は思わず来栖季雄に向かってまばたきを二回した。

来栖季雄は彼女のサインに気付き、彼女が自分に何かを伝えようとしていると思い、電話で相手の話を聞きながら、鈴木和香に向かって口の形で「ありがとう」と言った。

彼女はそんな簡単に男性に食べ物を食べさせるような女性だろうか?

彼女は誤解されてしまったけど、その誤解が好きで仕方がない、どうしよう?

まるで一枚の葉が鈴木和香の心の湖に落ちたかのように、波紋が幾重にも広がっていった。

彼女は甘い幸せを感じながら、うつむいて真剣にエビを剥き続け、腕を伸ばして来栖季雄の茶碗に入れようとすると、また来栖季雄に食べさせようとしていると美しく誤解され、口を開けて咥え取り続けた。

食卓は静かで、来栖季雄は時々電話の相手に一言二言話しかけ、ほら相手が彼にビデオを送って、相手のパソコンの内容を見せようとした。来栖季雄は見ながら、鈴木和香が手を伸ばしてくる時に口を開けて咥え取り、最後には習慣のようになって、鈴木和香の手がどこにあるかも見ずに、正確に彼女の指からエビの身を咥え取ることができるようになった。