セキュリティチェックに向かう時、来栖季雄は検査台の上で自分の携帯が「ピンポン」と鳴るのを聞いた。彼の足取りが一瞬止まったが、結局そのままセキュリティゲートを通過した。
検査を終えて、来栖季雄は身につけていた物を一つずつポケットに戻した。意図的に携帯を最後に手に取り、本来は見るつもりはなかったが、結局我慢できずに画面をちらりと見た。案の定、LINEの通知で、鈴木和香からの「?」だった。
来栖季雄は画面を見つめ、喉仏が二度上下に動いた。そして目を伏せ、瞳の奥の感情を隠し、顎を強く引き締めて何かを抑えているかのように、携帯をポケットに戻した。
来栖季雄が到着した時、飛行機の離陸まで残り30分だった。セキュリティチェックを終えると、客室乗務員が直接VIP通路から搭乗へと案内した。