第502章 嫁げないなら、僕が娶ろう(2)

鈴木夏美の家から出てきた時、突然雨が降り始めた。

鈴木夏美の住んでいる場所は、夜はもともとタクシーを拾いにくい場所だった。ましてや雨が降っているとなれば、鈴木和香は道端で長い間待たなければならなかった。ようやくタクシーを拾うことができた。

タクシーが桜花苑別荘の入り口に到着した時には、雨はすでに激しく降っていた。鈴木和香は料金を支払い、急いで椎名佳樹の別荘に走って戻った。たった5分ほどだったが、それでもずぶ濡れになってしまった。

鈴木和香は家に駆け込み、玄関のマットの上に立ち、体から滴り落ちる水滴も気にせず、まずバッグから携帯電話を取り出した。すると、何件もの不在着信があることに気づいた。すべて来栖季雄からのものだった。一番古いものは3時間前で、その時彼女は金色宮で泣きじゃくる鈴木夏美に付き添っていた。個室は騒がしく、着信音が聞こえなかったのだ。その後、鈴木夏美が酔って暴れ回り、彼女はそれを追いかけるのに必死で、携帯電話を確認する余裕もなかった。

鈴木和香は迷うことなく来栖季雄に電話をかけ直したが、相手は電源が切れているという案内が流れた。

鈴木和香は不在着信を見て少し嬉しくなっていた気持ちが、一瞬にして沈んでしまった。一日中彼からの電話を待っていたのに、今日もまた二人は行き違いになってしまうのだろうか。

鈴木和香は憂鬱な様子で携帯電話を近くの置き台に置き、滴る髪の毛を手で掴んで、床の吸水マットの上で絞った。

雨水は汚れていて、髪を絞っている時に、頭から頬を伝って不意に目に入ってしまった。

鈴木和香は生まれつき目が敏感で、撮影でアイラインを引く時もすぐに涙が出てしまい、毎回メイクに時間がかかっていた。今、雨水が入ってしまい、目の縁が一気に赤くなった。

鈴木和香はティッシュを一枚取り出し、目に入った雨水を拭こうとした時、背後からドアベルの音が聞こえた。

鈴木和香は玄関に立ったまま、体を回転させ、誰かも確認せずに、すぐにドアを開けた。外に立っている人が誰なのかも確認せずに、ティッシュで目に溜まった涙を拭おうとした。

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