第421章 彼の静かな寄り添い(8)

鈴木和香と椎名佳樹は同時に足を止めた。

椎名佳樹は笑顔を浮かべながら尋ねた。「兄さん、どうしたの?」

来栖季雄は椎名佳樹が鈴木和香の肩に置いた両手をしばらく見つめた後、冷たい表情で視線を外し、手に持っていた固定電話を差し出した。声は冷たく淡々としていた。「電話だ」

椎名佳樹は鈴木和香の肩から手を離し、電話を受け取った。着信表示を確認し、鼻を擦りながら電話に出た。「母さん...大丈夫だよ...家にいて退屈なだけで、和香が側にいるから...」

椎名佳樹は携帯を鈴木和香の前に差し出し、肩をすくめて困ったような表情で言った。「赤嶺女史が電話に出てほしいって」

鈴木和香が電話を受け取る間、椎名佳樹はキッチンで煮込んでいるスープを指差し、中へ入っていった。

鈴木和香は電話を耳に当て、「椎名おばさん」と呼びかけた。