鈴木和香は突然その場に立ち尽くした。
来栖季雄は扉を開けた人が誰なのかを見て取ると、瞳孔が明らかに一瞬広がり、すぐに元に戻った。彼は鈴木和香をじっと見つめていたが、その眼底には氷が張ったような、冷たい印象を与えるものがあった。
たった半月会っていないだけなのに、鈴木和香には一世紀も経ったかのように遠く感じられた。彼の容姿は相変わらず優れていたが、表情は以前よりも冷たく見え、眉間の冷淡さと疎遠さは霧のように濃く立ち込めていた。
「兄さん、来たんですね?」
椎名佳樹の一言で、鈴木和香は急に我に返った。その時になって、来栖季雄の視線が自分の胸元に向けられていることに気付いた。彼女はキャミソールのようなナイトドレスを着ており、きれいな鎖骨が大きく露出していた。鈴木和香は顔が熱くなり、落ち着かない様子で頭を下げ、素早く玄関から下がりながら、椎名佳樹に小声で言った。「あなたが応対して。私は着替えてきます。」