第441章 なぜ私の子供を望まないの?(1)

会話はここで終わり、一行は洗面所から出て行った。

トイレを済ませた鈴木和香は、便器に座ったまま立ち上がる気配もなく、先ほど聞いた会話が頭の中で繰り返し響いていた。

彼女も環映メディアの所属タレントなのに、こんな話は一度も聞いたことがなかった。

確かにここ最近、来栖季雄から頻繁に電話があり、どんな仕事の話があったかを伝えてくれていた。単純に会社の決定だと思い込んでいただけで、深く考えていなかった。しかし、彼が彼女に与えたそれらの仕事の裏で、彼が会社の上層部と喧嘩までしていたとは知らなかった。

スタントの件に関しては、まったく知らなかった。高山病の人について彼らが推測していたのは、おそらく自分のことだろうと思った。

以前、新潟県に行ったことがある。鈴木夏美と椎名佳樹と一緒に行って、二日間滞在した後、急いで東京に戻ってきた。理由は単純で、新潟県は標高が2000メートルほどしかないのに、すでに高山病がひどく、嘔吐、発熱、心拍数の上昇に苦しんだ。