第442章 なぜ私の子供を望まなかったの?(2)

来栖季雄は最近、彼女にとても優しかった……生理用品を買うような些細なことから、脚本を直すような大きなことまで……彼女が知っていることも、知らないことも……

彼女のスケジュールについて、秘書に馬場萌子へ連絡させることもできたし、自分で電話をかけることもできたのに、時々わざわざ直接伝えに来て、一度は満記甜品の袋を持ってきたこともあった。

その時、松本雫が投稿したSNSで満記甜品を食べている写真を見て、彼女は「雫姉、私も食べたい」とコメントを残しただけだった。

実は、彼が松本雫とのSNSでのやり取りを見て、わざわざ満記甜品を買ってきたことは分かっていた。

感動はしたけれど、必死でその感動を無視しようとした。

なぜなら、愛することを止められない愛もあれば、許せないことも確かにあるから。

彼に傷つけられ、子供まで失ったのに、まだ愚かにも彼を愛し続けたくはなかった。

人を愛することは惨めかもしれないが、尊厳を失うほど惨めにはなりたくなかった。

鈴木和香はトイレに長く座っていた後、深く息を吸い、全ての思いを押し込め、心の動揺を必死に抑えて立ち上がり、水を流してトイレから出た。

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松本雫がドアを開けると、外に立っていた椎名佳樹を見たが、何も言わなかった。

トイレにいたマネージャーが「雫、誰?」と興味深そうに尋ねながら顔を覗かせたが、椎名佳樹を見るとすぐに表情が慎重になり、丁寧に「椎名様」と呼びかけた。

椎名佳樹はマネージャーを完全に無視し、ただじっと松本雫を見つめていた。

松本雫は椎名佳樹の視線を無視し、マネージャーに向かって「先に部屋に戻っていて」と言った。

マネージャーは頷いて、椎名佳樹の傍らを通り過ぎて出て行った。

松本雫は椎名佳樹を一瞥もせずに部屋に入り、椎名佳樹がドアを閉めて入ってきたが、彼が何も言う前に、彼女はドレスを脱ぎ、ベッドに横たわって「さあ、どうぞ」と言った。

椎名佳樹は松本雫のこの行動に呆然と立ち尽くした。

松本雫は椎名佳樹に向かって眉を上げ、唇を曲げて笑いながら「椎名坊さん、私を訪ねてきたのは寝るためでしょう?早く済ませましょう。明日早起きなので、早く終わらせて帰りましょう!」

椎名佳樹は我に返り、怒りで額の血管を浮き立たせながら「松本雫、お前は自分を貶めているのか?」と怒りを含んだ声で言った。