第538章 13年間愛してた(8)

「今日はまだ月曜日なのに、水曜日まであと二日もあるのに。ただの食事なのに、家に帰ってから彼女に言えばいいじゃない?なぜメッセージを送る必要があるの?しかも二日も前から……」

鈴木和香は困惑しながら来栖季雄に「うん」と返信した。

和香からの返信を受け取った来栖季雄は、オフィスチェアに座ったまま、ゆっくりと息を吐き出した。そして目を閉じ、和香に告白するために用意した言葉を心の中で一字一句確認した。問題がないことを確認してから、姿勢を正して仕事に戻ろうとしたが、書類を見ているときも度々気が散ってしまい、結局書類を閉じて、机の内線電話を押した。「車を用意してくれ。麗景楼に行く」

-

七夕まであと二日あったが、来栖季雄の告白シーンの要求が多かったため、秘書は麗景楼の責任者と連絡を取った後、すぐに準備を始めていた。

来栖季雄のシーン設定は麗景楼の最上階にある唯一の露天式の個室で、夜になれば頭上に満天の星が見え、横を向けば夜の皇居のライトアップが見える、美しく壮大な景色だった。

来栖季雄が到着したとき、数人のスタッフがテラスでイルミネーションを取り付けていた。その中の一面はすでに装飾が完了しており、支配人がライトをつけると、七色の光が明滅していた。昼間だったため、それほど美しくは見えなかったが、最後に赤いライトで「和香のいる季雄」という文字が浮かび上がったとき、来栖季雄の心は高鳴った。

テラスの四隅には支柱が立てられ、そこに美しいヨーロッパ風の大きな花かごが吊るされていた。まだ生花は入っていなかったが、白いオーガンジーが垂れ下がっていた。

支配人は来栖季雄に説明しながら、テラスの端にある大理石のテーブルを指さして言った。「来栖社長、ご指示通り、ここにキキョウの花束を置き、その周りにキャンドルを配置します。また、ご要望に従って、海外から特別にシェフを招き、ワインもご指定のものを用意しております……雰囲気を盛り上げるため、テラスの縁にも装飾を施し、イルミネーションを取り付けました。当日は生花も飾りますので、風が吹くと花の香りが漂ってくるはずです……」