第539章 13年間愛してた(9)

鈴木和香が水曜日の朝になって、やっとその日が七夕だと気づいた。

普段なら来栖季雄は仕事に行くとき彼女を起こさないのに、その水曜日の朝は、起床前にキスで彼女を夢から目覚めさせ、耳元で囁くように言った。「和香、今夜の約束の食事を忘れないでね。」

鈴木和香は眠り足りず、あくびを連発しながら、半開きの目で来栖季雄に頷いて「分かった」と答えた。

「覚えていてね、六時半に迎えを寄越すから。」来栖季雄は和香の耳元で、しつこく念を押した。

和香は今度は声を出さず、分かったと頷きながら目を閉じて、寝返りを打とうとした時、また季雄の声が聞こえてきた。「和香、仕事行ってくるけど、今夜の食事を忘れないでね……」

和香は昨夜季雄に半分夜更かしさせられ、今は疲れて眠くて、しかも彼のうるさい小言にイライラし始め、考える間もなく枕を掴んで、思い切り季雄に投げつけた。季雄の続きかけた言葉は、お腹の中に消えてしまった。

季雄は洗面所で身支度を整え、服を着て、全てを整えて寝室を出る時、まだ寝付けていない和香に振り返ってもう一度念を押した。「和香、行ってくるね。夜に会おう……」

また一つの枕が飛んできて、季雄は手を上げて見事にキャッチし、近くのソファーに投げ入れてから、ドアを閉めて去っていった。

寝室がようやく静かになったが、和香はベッドに横たわったまま、どうしても眠れなかった。結局イライラしながら寝返りを打って、ベッドから起き上がり、習慣的に携帯で時間を確認しようとした時、ちょうど季雄からメッセージが届いた。「和香、今夜、食事ね。」

和香は突然崩壊しそうになり、携帯をベッドに叩きつけると、布団を頭からかぶって、やり場のない怒りを抑えた。

今日は一体何の日なんだろう、季雄がこんなにしつこく食事の約束を確認するなんて?

そう考えた和香は、布団をめくって携帯を手に取り、まず西暦を確認したが特に変わったことはなく、次に旧暦の日付を見た。七月七日、七夕。

七夕……

和香の頭の中でこの二文字が二度響いて、やっとこの祝日が何を意味するのか理解した。

季雄が七夕の夜に食事に誘うということは……デートに誘っているの?これは恋人同士が祝う日よね……これは、半人前の彼女から正式な彼女になれるってこと?