もう九時半になろうとしていた。約束の時間から二時間も過ぎているのに、彼女は来る気がないのだろうか?
十三年だ……彼は十三年も待ち続けて、やっとこの日を迎えられたのに、道半ばで倒れるなんて、こんな結末は絶対に受け入れられない。
来栖季雄は遠くの明かりから視線を戻し、テーブルの上の携帯を手に取って、再び鈴木和香に電話をかけた。今回は三回呼び出し音が鳴った後に電話が繋がり、彼の目に一瞬喜びの光が宿った。「和」という一文字を発した途端に電話は切られ、ツーツーツーという話し中の音が響いた。
来栖季雄が再びかけ直しても、先ほどまでと同様に誰も出なかった。
さっきは出たのになぜ切ったんだ?椎名グループの買収の件で怒っているのか、午後に彼が癇癪を起こして彼女を置き去りにしたことに腹を立てているのか?
でも電話に出たということは、携帯は見えているはず……来栖季雄は突然希望の光を見出したかのように、急いで耳元の携帯を下ろし、鈴木和香にメッセージを送った:【和香、午後は僕の態度が悪かった。君を置いて行ってしまってごめん。】
来栖季雄がメッセージを送信すると、画面に「メッセージが届きました」という表示が出て、鈴木和香が自分のメッセージを見たことが分かった。そこで急いでもう一通送信した:【和香、僕のメッセージが見えているのは分かっているよ。まだ麗景楼で待っているから、今来てくれないか?話し合おう。】
送信したメッセージには返信が来なかった。来栖季雄は携帯を握りしめながらしばらく待ち、また鈴木和香に電話をかけたが、やはり誰も出なかった。そこでまた一通メッセージを送った:【和香、君が来るまで待っているよ。ずっと待ち続けるから。】
長い待ち時間の後、来栖季雄はさらにメッセージを送った:【もし来ないなら、僕はずっとここで待ち続けるよ。】
このメッセージを送った後、来栖季雄は携帯を手に取り、顔を両手でこすってから、テラスの手すりの前にまっすぐ立ち、遠くの明かりを見つめた。
どれくらいの時間が経ったのか分からない。その間、手のひらの携帯が一度振動したが、期待に胸を膨らませて画面を見ると、それは天気予報のお知らせだった。
来栖季雄は落胆しながら腕を下ろした。
十一時になると、麗景楼のマネージャーが来栖季雄に閉店時間だと告げに来た。