来栖季雄に一晩付き添って眠れなかった秘書は、眠気に襲われて壁にもたれて居眠りをしていたが、突然来栖季雄がテラスから離れるのを見て、すぐに目が覚めた。「来栖社長、どちらへ?」
来栖季雄は黙ったまま、足早に歩き、ドアを開けて廊下へ向かった。
秘書は慌てて小走りで追いかけ、もう一度尋ねた。「来栖社長、何をしに行かれるのですか?」
「彼女を探しに行く」来栖季雄はたった五文字で答え、エレベーターに乗り込んだ。
彼は十六時間も彼女を待ったが、彼女は現れなかった。だから彼女を探しに行くのだ。
もし彼女が許してくれず、最終的に彼らがまた他人同然になってしまうのなら、そうなる前に、自分なりに努力はしたいと思った。たとえその結果が避けられない悪夢だとしても、それは受け入れるつもりだった。