第561章 13年間愛してた(31)

鈴木夏美が言い終わると、電話を切ろうとしたが、受話器越しに聞き覚えのある声が聞こえてきた。「夏美様……」

鈴木夏美の動きが突然止まった。

来栖季雄の秘書?まさか本当に来栖季雄が自分を探しているの?何のために?

鈴木夏美の頭の中に疑問が一瞬で浮かんだが、わずか10秒の躊躇の後、彼女は受話器を再び耳元に持っていった。「今、下に行きます」

電話を切ると、鈴木夏美は会議の資料をデスクに放り投げ、オフィスを出た。会議室で待っている秘書が話しかけようとするのも待たずに、「会議は1時間延期」と一言残し、ヒールを鳴らしながら颯爽とエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターを降りると、鈴木夏美はロビーの入り口に立っている来栖季雄の秘書の姿をすぐに見つけた。

鈴木夏美が歩み寄ると、来栖季雄の秘書はヒールの音を聞いて振り返り、夏美を見るなり即座に声をかけた。「夏美様、来栖社長がお呼びです」