長い時間が経って、鈴木和香は瞬きをして、口を開いた。「明日退院できるの」
「うん」
「それで、東京に戻って体を休ませてから、数日後に撮影現場に戻るように言われたの」
「そう」
「私、明日の午前十時の便なの」
「うん」
「あなたは?東京に戻るの?」鈴木和香は来栖季雄の返事を待たずに、電話口で小声で急いで言った。「お姉ちゃんが戻ってきたから、切るね」
来栖季雄は電話のツーツーという音を長く聞いてから、携帯を収めてポケットに入れた。その場に立ったまま動かず、鈴木和香の病室を長い間見つめていた後、優しい表情で頭を下げ、軽く笑った。
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翌日、一行は空港に到着した。椎名佳樹は東京から車で来ていたため、帰りは飛行機に乗ることになり、空港に着くと直接車両預かり手続きに向かった。鈴木和香、鈴木夏美、赤嶺絹代、おばさんの四人は自動チェックインで搭乗手続きを済ませ、カフェで椎名佳樹を待つことにした。