第475章 ビデオチャット(5)

一日中憂鬱だった来栖季雄は、鈴木和香の口から自分の名前を呼ばれ、気持ちが一気に軽くなり、軽い声で「うん?」と返事をした。

たった一言だけだったが、目覚めた時に来栖季雄の姿が見えなかったことで落ち着かなかった鈴木和香の心は、やっと落ち着きを取り戻した。でも、何を話せばいいのかわからなかった。彼に会いたかったなんて言えるはずがない...恥ずかしすぎる。

鈴木和香は携帯を握りしめ、少し躊躇してから「来栖季雄、夕食は食べた?」と尋ねた。

来栖季雄は振り向いて、助手が買ってきた一度も手をつけていない出前の袋を見て、優しい声で「食べたよ」と答えた。

そして手に持っていたタバコを見つめた。電話越しでは彼女には見えないことはわかっていたが、彼女が自分の喫煙を好まないことを知っていたので、残り半分以上あったタバコを消して車の灰皿に捨てた。