第513章 嫁げないなら、僕が娶ろう(13)

椎名佳樹がここまで話したとき、突然言葉を止め、頭を上げて鏡で自分の腫れた唇の端を見つめ、横を向いて鈴木和香に尋ねた。「和香、俺の顔に傷があるのってかっこいいと思う?」

昨日、彼がトイレから出てきたとき、ちょうどトイレに向かっていた松本雫と出くわした。その時、彼は唇の端の傷を拭っていた。彼女が近づいてくるのを見て、無傷の方の横顔を向けた。彼は彼女がいつものように、他人のように通り過ぎると思っていた。しかし、彼女が彼の横を通り過ぎた後、突然立ち止まり、しばらく立っていた後、振り返って彼の前に来て、手を上げ、彼の顔をまっすぐにして、唇の端の傷を数回見つめ、「ふーん」と三回舌打ちをして、「こっちの方が見やすいわね!」と言い放ち、彼の顔から手を離して、隣のトイレに入っていった。

鈴木和香はあっさりと答えた。「かっこよくない。」

「かっこよくない?」椎名佳樹は疑問を持って聞き返し、バックミラーを見続けた。「俺はかっこいいと思うけどな...」

「...」鈴木和香はまぶたを少し持ち上げ、椎名佳樹を無視した。しばらくして、彼女は声を出した。「佳樹兄、ありがとう。」

元々自分の唇の端の傷を見つめていた椎名佳樹は、鈴木和香の言葉を聞いて、不真面目な表情が真剣になった。「和香、さっきの話は、ただの冗談だよ。実際、俺は全然気にしてないんだ...」

「わかってる。」鈴木和香は唇の端を曲げて笑った。「でも、やっぱりお礼を言いたいの。」

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椎名佳樹は用事があったため、鈴木和香を桜花苑の入り口で降ろし、自分の別荘に入らずに、そのまま車を転回させて去っていった。

鈴木和香は椎名佳樹の別荘に戻ると、荷物の整理を始めた。

彼女は椎名佳樹の別荘にそれほど長く住んでいなかったが、荷物は少し多かった。その大半は自分と来栖季雄が先日旅行した時に買ったものだった。

彼女が椎名佳樹の別荘に来た時は、スーツケース一つだけを持ってきたが、荷物が少し入りきらなかった。最後には桜花苑近くのスーパーに行って大きなスーツケースをもう一つ買って帰り、やっと自分の荷物を全て整理することができた。

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鈴木和香の付き添いが必要なくなった来栖季雄は、翌日会社に行った。