第511章 嫁げないなら、僕が娶ろう(11)

来栖季雄が桜花苑に車で到着したのは、まだ夜の9時だった。

鈴木和香が大阪から送った宅配便は桜花苑の管理事務所に預けられており、来栖季雄はまず管理事務所まで車を回して荷物を車のトランクに入れ、それから椎名佳樹の別荘の玄関まで回った。

荷物がかなり多かったので、来栖季雄は鈴木和香と一緒に家の中まで運び入れた。

これほど長く遊んでいたのは確かに体力を消耗する活動で、来栖季雄も鈴木和香をこれ以上邪魔しなかった。

来栖季雄が帰ろうとする前に、鈴木和香は彼を呼び止めた。「来栖季雄。」

来栖季雄はドアを開けかけた手を止め、振り返って鈴木和香を見た。

鈴木和香はスリッパを履いたまま、リビングから玄関まで歩いてきて、来栖季雄の前に立ち、顔を上げて言った。「明日、椎名家に行かなければならないの。」