第549章 13年間愛してた（19）

来栖季雄はシャワーを浴び終え、バスタオルを巻いて出てくると、アシスタントはすぐに持ってきた服を彼の前に差し出した。「来栖社長、今夜の鈴木さんとのお食事用にご用意した服です。」

アシスタントは意図的に「今夜」と「お食事」という言葉を強調した。案の定、来栖季雄の目の中に一瞬の後悔の色が浮かんだのを見逃さなかった。

以前、アシスタントが椎名グループの買収が明るみに出た場合、鈴木和香が怒り出したらどうするかと注意したのに、彼は自信満々に対処すると言っていた。結果はどうだ？怒りに任せて、我慢を失い、その場を立ち去るというのが、彼の対処方法だったのか？

来栖季雄は唇を動かし、アシスタントから服を受け取ったが、更衣室に向かわず、椅子に置いていた携帯電話を手に取り、鈴木和香の電話番号を探した。発信ボタンの上で一瞬躊躇した後、最終的にメッセージを送ることにした：【ごめん。】

感情的になってしまってごめん。少し我慢が足りなくてごめん。

ネガティブな感情が消えるにつれて、理性が徐々に目覚めてくる。長年、自分は冷静だと思っていたが、鈴木和香に関することだけは、いつも感情を抑えきれず、興奮しやすく敏感になってしまう。

来栖季雄は携帯電話を握りしめ、しばらく考え込んでから、さらに一行を打った：【和香、今夜の食事の時に、ちゃんと話し合おう。】

来栖季雄は画面にメッセージ送信完了の通知を確認すると、携帯電話を椅子に戻し、立ち上がって更衣室に向かおうとしたが、場所を伝えていないことを思い出し、再び携帯電話を手に取ってメッセージを送った：【麗景楼で待ってる。】

この六文字を送り終えると、来栖季雄は長いため息をつき、これまで暗く沈んでいた気分が大分良くなり、更衣室に入っていった。

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鈴木和香がエレベーターの中で受け取ったのは鈴木夏美からの電話で、赤嶺絹代が椎名グループの件でショックを受けすぎて寝込んでしまったという。

鈴木和香は椎名家とは血のつながりはないものの、彼女が生まれた時から両家は密接な関係にあり、この数年間、赤嶺絹代は彼女にとても良くしてくれていた。今、病気になってしまった以上、見舞いに行かないわけにはいかない。しかし、椎名家の玄関に着いた時、少し躊躇してしまった。来栖季雄のオフィスの前で椎名佳樹を見た時の罪悪感と動揺が、再び心の中から湧き上がってきた。