第547章 13年間愛してた(17)

「ああ、その通りだ……」来栖季雄は突然唇を歪めて軽く笑い、鈴木和香の目を見つめながら、自嘲的な表情を浮かべた。「でも、残念だね。結局、僕は椎名佳樹じゃない」

椎名家が事件に巻き込まれたあの夜、彼女が彼の胸に顔を埋めて、椎名佳樹のことを気にかけてあげてと言ったことを思い出した。

さっき彼女が彼のオフィスのドアの前に現れ、彼と椎名佳樹を同時に見たとき、最初に呼んだのは椎名佳樹の名前だった……

椎名佳樹と離婚したとしても、彼が彼女にこれほど尽くしていても、彼女の心の中で椎名佳樹は依然として最も大切な存在なのだ!

「君はずっと、もし僕が椎名佳樹になれたらいいのにって考えていたんだろう?」来栖季雄は自分の中に嫉妬が広がっていくのを明確に感じた。自分の感情を抑えようとしたが、鈴木和香のさっきの比較によって完全に感情が爆発し、気づいた時には、次の瞬間、彼の口調は冷たく厳しいものになっていた。「でも、鈴木和香、言っておくが、僕は一生椎名佳樹にはなれない!」