最後、馬場萌子は軽く鈴木和香の布団を掛け直してあげた。「晩ご飯を持ってくるから、ゆっくり休んでね」
鈴木和香は小さく返事をした。
馬場萌子が出て行くと、部屋の中は怖いほど静かになった。鈴木和香は自分の呼吸音さえ聞こえるほどだった。彼女は長い間横たわっていたが、やがてそっと体を動かし、体を丸めて、布団に顔を埋めて、小さな声で呼んだ。「来栖季雄」
返事は部屋の静けさだけだった。
鈴木和香の目尻からまた一筋の涙が零れ落ちたが、唇の端は微かに上がっていた。
私の最愛のあなた、私はずっとあなたを探し続けます。
たとえこの人生であなたに会えなくても、でも、あなたを探すことだけが、私とあなたを繋ぐ唯一のことなのです。
だから、諦めません。
いつか本当に再会できる日が来るかもしれない。その時には私たちは白髪交じりで、歯も抜けているかもしれない。