第582章 知られざる事(12)

「監督、打ち上げはどうですか?東京で開催するんですか?」若手女優が大きな声で叫んだ。

「もちろん!もちろん!もちろん!」監督が三回続けて答えると、撮影現場の人々が一斉に笑い声を上げ、多くの人が「ありがとうございます!」と叫んだ。

時代劇だったため、鈴木和香のメイクは複雑で、落とすのも手間がかかった。彼女が全ての作業を終えた頃には、撮影現場のスタッフはほとんど帰っていた。

鈴木和香が楽屋から出てきた時、二人のスタッフが床に散らばったゴミを片付けていて、彼女を見かけると親切に挨拶をした。「和香様、お疲れ様です!」

鈴木和香は彼らに微笑みかけ、「お疲れ様です」と返して、馬場萌子と一緒に宿舎へ戻った。

撮影地はまだ岡山県で、仮設の簡易宿舎に住んでいた。鈴木和香は昨日から生理が始まり、体が少し弱っていた上に、今日も一日中撮影をしていたため、すっかり疲れ果てていた。宿舎に戻るとすぐに鉄パイプのベッドに横たわった。真冬で、寒さは厳しく、部屋には暖房がなく、外よりも寒く感じられた。和香は厚い布団を二枚重ねてようやく暖かさを感じたが、足だけはどうしても温まらず、ずっと冷たいままだった。