第599章 私の愛する人、久しぶり（9）

鈴木和香は思考から我に返り、鈴木夫人に頷いて、彼女が持っている急須を見て手を伸ばした。「お茶を入れましょうか？私がやります。」

「いいのよ。」鈴木夫人はソファーに座っている田中大翔と鈴木夏美を見て、にこにこしながら言った。「大翔くんと夏美が待っているわ。中庭で花火をするって。」

鈴木夏美は母の言葉を聞いて立ち上がり、田中大翔をソファーから力強く引っ張り上げながら、鈴木和香に声をかけた。「和香、行こう！ずっと待ってたの。」

-

幼い頃、おじいちゃんとおばあちゃんがまだ生きていた時、毎年の春節には皆が実家に帰っていた。あの頃は両親もまだ健在で、年越しの食事が終わると、お父さんは彼女と鈴木夏美を連れて中庭で花火をし、お母さんは微笑みながら傍らで見守っていた。

そうして長い間、大晦日の夜に花火をするのが習慣となった。お父さんが亡くなってからは、叔父さんが彼女たちを連れて花火をするようになった。

今夜は田中大翔がいたので、鈴木旦那は花火には参加しなかったが、それでも予め用意しておいた大きな花火の箱を自ら中庭まで運んでいった。

花火は田中大翔が打ち上げた。彼は整然と一列に並べ、タバコに火をつけて、それぞれに点火していき、急いで鈴木夏美の側に退いた。十数秒後、花火が次々と開いていった。

たちまち夜空は、まるで火樹銀花のように、極めて絢爛たる光景となった。

鈴木夏美は感動的な瞬間を見て、興奮して手を上げ、田中大翔に指さして見せた。

鈴木和香は二人から約二メートル離れた場所に立ち、頭を上げて、次々と開いては消えていく花火を見つめていた。目の奥が熱くなり、空にもう花火が咲かなくなった時になってようやく上げていた頭を下ろした。すると鈴木夏美が田中大翔の首に腕を回し、田中大翔は鈴木夏美の腰に手を回して、二人が離れがたく口づけを交わしているのが目に入った。

鈴木和香は二人をしばらく見つめた後、まぶたを伏せた。家に戻ろうと身を翻そうとした時、ポケットの携帯電話が突然鳴り出し、キスをしていた鈴木夏美と田中大翔を驚かせた。

鈴木和香は二人に手を振って見せ、着信表示を見ると馬場萌子からだったので、中庭の外に出て電話に出た。

「和香、明けましておめでとう！」