鈴木夫人は田中大翔のことをとても気に入っていて、自分の娘が彼と付き合い始めてからは、わざわざ田中大翔の映画を何本も見に行き、麻雀をする時にも、友達に自分の娘の彼氏の新しいドラマを頻繁に勧めていた。
そのため、餃子を作っていた鈴木夫人は、田中大翔が来たと知ると、わざわざキッチンから出てきて、田中大翔を座らせた。
鈴木家で大晦日の夕食が始まった時、ちょうど春節晩会も始まり、鈴木旦那はわざわざ音量を上げた。
ここ数年、春節晩会はネットユーザーにより年々質が落ちていると揶揄されているが、大晦日の夜の象徴となっていることは否定できず、やはり見ないと年の瀬の雰囲気が出ないものだった。
これまでの大晦日の夜は、食事の時は鈴木旦那一人が男性で、時々鈴木夏美が付き合って一緒に飲むことがあったが、今日は田中大翔がいるので、鈴木旦那は長年大切にしていた良い酒を一本取り出した。
一緒に飲める人ができて鈴木旦那はとても嬉しく、田中大翔は来る前にわざわざプレゼントを持ってきており、エメラルドのブレスレットをもらった鈴木夫人は喜びを隠せず、食卓で田中大翔にもっと食べるようにと何度も勧めた。
田中大翔は本当に心から鈴木夏美のことが好きで、食卓で鈴木夏美がナプキンを取ってほしいと頼んだ時、田中大翔の動作が少し遅かったため、せっかちな鈴木夏美は少し強い口調で催促したが、田中大翔は急いでナプキンを取って鈴木夏美の手を拭いてあげた。
鈴木夫人は鈴木夏美を少し叱ろうとしたが、田中大翔は優しく笑って大丈夫だと言い、鈴木夏美は母親に得意げにウインクし、鈴木夫人は無奈に首を振った。
おそらく田中大翔が加わったせいで、鈴木旦那と鈴木夫人の注目は彼と鈴木夏美に集中し、食卓での話題も二人を中心に展開され、鈴木和香は会話に入る余地がなく、話す気も失せていたので、ただ笑顔を浮かべながら食事をし、時々田中大翔と鈴木夏美の甘い様子を見ると、目の奥に一瞬の暗さが走り、すぐに俯いて黙々と茶碗の餃子を食べていた。
食事が終わると、田中大翔は食器の片付けを手伝おうとしたが、鈴木夫人に断られ、鈴木夏美に田中大翔を連れて行くよう促された。
鈴木和香は食卓に残された食べ残しを見て、鈴木夫人一人に片付けさせるわけにはいかないと思い、一緒に手伝うことにした。
鈴木和香は率先して食器を洗った。